特集にあたって

財団法人積善会曽我病院 渡辺勝次

 精神科領域では「精神保健福祉法」により,患者の人権に配慮した医療が求められる。とくに任意入院の閉鎖処遇時や隔離・身体拘束時には,書面による告知が求められ,それらの記録も必要となる。また,日々のケアにおいて,日常生活レベルの問題や社会復帰に向けての援助が必要となる。よって,患者個々の問題にそった看護計画を立案し,それにもとづいた実践を記録することが重要となっている。実践した看護とその根拠を記録で示すことができるからである。 看護記録がその役割を果たすためには,個々の看護問題,看護計画,経過記録,サマリーなどの整備は当然必要と言える。特に,看護実践を記録する経過記録は重要な位置を占めている。自分の行った看護をいかに効率よく効果的に記録し,ほかのスタッフに情報として伝えることができるかが経過記録の重要なポイントとなる。 新年度を迎え,新人看護師の入職,他科病院からの転職,あるいは,指導者として教育を任せられるかもしれない。「精神科の記録は難しい,何を,どう記録すればよいのか?」など,戸惑いを感じる看護師も多いのではないだろうか。この特集では,精神科に求められる看護記録のコツや医療紛争における看護記録の重要性,さらに,看護記録改善に取り組んだ病院の実践などを示した。看護記録の重要性をあらためて考えたい。