特集にあたって

多摩在宅支援センター円 寺田悦子

 近年は「精神保健医療福祉の改革ビジョン」にもとづき,精神科病院や地域医療福祉においても「入院医療中心から地域生活中心へ」と,社会的入院患者の退院促進が行われてきている。しかし,現状では統合失調症の長期入院患者数は減少していても,認知症患者の増加や入院が長期化する傾向があることが指摘されている。
 いま,精神科病院,訪問看護においても,認知症患者への対応が問題となっている。現場のスタッフからは,マンパワーの問題から「薬に頼らざるを得ない」「隔離せざるを得ない」と言ったジレンマも聞こえてきている。このような状況の中で,認知症看護においてもモチベーションをもって働くためには,自分たちのケアをあらためて見直すことが必要である。
 今回の特集は総論の「認知症を取り巻く現状の整理」に始まり,座談会では「病態や病期を意識し,それぞれの患者のニーズに合わせれば看護が楽しくなる」と語られている。患者を個別にとらえることの重要性や病院の取り組み・変化などが紹介され,示唆に富んだ内容である。
 また中核症状と周辺症状の違いを意識することや,「誰のための医療,ケアなのか」「目の前の認知症の人は未来の私」という視点は,地域で働く私にとって,心揺さぶられるキーワードであった。