特集にあたって

財団法人井之頭病院 渡辺純一

 平成20年度より精神科地域移行実施加算が新しく診療報酬に創設され,その結果5年以上の長期入院患者の退院促進が活性化してきた。今年度の改定で,診療報酬はさらに引き上げられ,長期入院患者の退院は今後,より一層加速していくことが予想される。また,精神科入院料も入院期間の短期化を促進するものとなっている。一方で,こうした状況を背景に,押し出しのように退院したものの,短期間で再入院となる患者が増えてきているように思う。
 再入院に対して,医療者はどうしてもネガティヴな印象を持ちやすい。退院した患者に対し,「もう入院しないでほしい」と考えるのはごく自然のことであろう。もちろん,当事者や家族も同様の思いを抱えているに違いない。しかし,地域全体を視野に入れて考えれば,病院も社会資源の1つであり,再入院はその資源を活用しているに過ぎないのではないだろうか。
 本特集では,「再入院」に対してさまざまな角度から迫っている。病院だけでなく,当事者や家族,地域からの視点や,再入院時にどのようなケアが必要なのか,具体的にどのようにかかわるのかなど,「再入院」を「チャンス」に変えるためのヒントが散りばめられている。読者のみなさんが,再入院に対して新たな視座を得るための一助となれば幸いである。