特集にあたって

公立学校共済組合関東中央病院 佐藤恵美子

 初めて精神科を訪れるとき,患者・家族はどんな気持ちなのだろう。
 緊張していたり,不安であったり,場合によっては心を閉ざしてしまっている状態かもしれない。悩みに悩み,迷いに迷い,やっとの思いで,それこそ藁にもすがる気持ちで精神科病院に辿り着いたのかもしれない。そのような患者・家族を迎え入れる精神科外来に求められる医師,看護師,コメディカルの役割,アメニティなどはどのようなものなのだろうか。
 外来は地域と病院を結ぶ正面玄関であり,各病院の“顔”である。患者・家族が安心できる環境づくりが重要なのはもちろん,訪れた患者・家族に最初に応対するスタッフの果たす役割は大きい。そしてそこでの関係性をいかに大切に扱うかが後の治療にも影響する。
 精神科では特に患者との関係性を意識し治療を展開している。関係性はいわば“つながり”であり,それは時として安心感や癒しをもたらす。精神科外来を訪れたことで,自分の苦しさをわかってくれる人の存在を実感する。そして「独りではない」という感覚を取り戻す。さらにはその人を通し,新たな“つながり”を見つけ社会へ戻っていく。
 今回の特集は,精神科外来に焦点をあてた。執筆いただいたそれぞれの稿の中には,さまざまな視点からの“つながり”が記されている。