編集こぼれ話

 取材のなどでメインに聞きたいことを聞き終えて、一段落つくと、世間話のような雑談のような流れで時折、病院の内輪話になる。主任の誰それさんが今度師長になる、部長はこの春で退職だ、云々。こうした話の流れはだいたいある方向に収れんしていく。管理者だったらスタッフへの小言、スタッフだったら管理者への要求。笑いを交えて話している分にはいいが、本当に怒っている人もいる。「直接、相手にそう言ったらいいじゃないですか」と言って、「そんなこと言ったら関係がギクシャクするじゃない」と怒られたこともあった。
 このズレはなんだろう。そんな疑問が企画の種となった。当初はズレを明らかにする、ということを念頭においていたが、企画を進めていくうちに、そんな簡単には「明らか」にはならないな、と思い始めてきた。企画としてどうなんだろう、うーむ……と思い悩んでいたが、コーチングの専門家(登場いただいた浜端久美氏)に話を聞くなかで、少し前向きな「諦め」もでてきた。専門家いわく、コーチングにおいては「答えは常に自分の側にある」という考えが基本となる。だから「誰かを変えよう」と思うのは、拙速。明らかにすべきは自分の内面ではないか。だから今回の座談会でも、そのほかの記事でも純粋にその執筆者がスタッフとの関係性で思うことを書いてもらった。自己一致、というわけではないが、「私はこう感じる」を導きの糸として、スタッフ・管理者の関係が内省されるのがよいのではないか。今月号の特集がこうした編集意図に沿うものであってほしいと願うが、どうでしょうか。