特集にあたって

医療法人社団翠会成増厚生病院 榊 明彦

 前回のアディクションの特集(2008年10月号)から約2年のときが過ぎ,その間,報道などで「これはアディクションの問題?」と思える出来事がいくつかあった。たとえば,現職警察官の飲酒運転による事故や,有名女優の覚せい剤の使用,または芸能人の麻薬(MDMA)使用と女性死亡との関連の事件。さらに最近では,アルコールや薬物などの物質アディクションのほかに,ギャンブルなどのプロセスアディクションの増加も取り上げられている。これら1つ1つの行動に治療の必要性があったのかは不明であるが,彼らはみなストレスを積み重ねていった結果,惑溺するに至ったと考えることはできる。この慢性的に広がりをみせているアディクションの問題に,現在携わっている精神科看護師。また,かかわらざるを得ない精神科看護師はどのような認識をもてばよいのだろうか……。
 そこで今回は,アディクションの原点とも言われる薬物依存症とアルコール依存症の治療の現状に焦点をあて「医療ができること・できないこと」と題して特集を組んだ。アディクションと聞いてアレルギー反応を起こす人,あるいは苦手意識の強い人も,ぜひ一読していただきたい。「できないこと」に取り組むよりも,「できること」からていねいに始めたい。アディクションの苦手さは変わらずとも,きっと実践には役立つはずである。