2010年9月号の表紙

 どこで読んだのかは覚えていませんが,アルゼンチンのある音楽家が「音楽があなたの人生にもたらしたものとは?」という質問に対して次のように答えていました。「調和。それと,『できること』と『できないこと』があるということを学んだ。『できないこと』があるということを痛感したとき,認めることは苦しかったけれども,反対に自分の肩にのしかかっていた重みからはじめて解放されもした。そこから可能性も開けた」。
  今月号の特集は「アディクション看護―医療にできること・できないこと」と題しました。「アディクション看護が苦手」というお話しを耳にしますが,その理由の1つは「どこまでのことを医療ができるのか」がわからず,過剰に役割を背負わなければならないと思ってしまう点にあるのではないかと考えました。限界設定をすることで,医療が「できる」ことが見えてくるのではないか,そのような考えから本特集を企画しました。
  本特集のタイトルを決めたときに,頭に浮かんだのが冒頭の音楽家の言葉でした。表紙イラストには,ひそかにそんなメッセージを込めています。