2010年10月号の表紙

 まだまだ暑い日が続いていますが,季節は間もなく秋をむかえます。「○○の秋」などと流暢なことをいう余裕など,どの業界や現場においてもないのかもしれませんが,ほんのわずかでも優雅な一時を過ごすことはけっして過ぎた贅沢ではありません。
  今回の特集では「語り」(主に当事者の「語り」,あるいは「語りを聴く」という営み)について取り上げました。近年,「ナラティヴ」という概念を基軸に,「語り」という言葉が注目されてきました。その中には「Living Library」という活動もあります。ここでは,「語り部」を「生きた本」(未完の物語)としてとらえ,「語り」を通して「新たな物語」が紡がれるというユニークな思考が展開されています。「語る」ことと「書く」こと,「語りを聴くこと」と「読むこと」は決して同一の営為ではありませんが,それでも両者の間には類似するものも多々あるように思えます。今秋,周囲の「語り」にゆっくりと耳を傾ける時間がみなさまに訪れますように。そんな願いを今月号の表紙イラストに込めました。