2010年11月号の表紙

 今月号の特集では「事例検討会」を取り上げました。ケアにあたる医療者自身が時にその一因ともなり,目まぐるしく変化する臨床の現場。そのような変化の渦中で「何が起こっていたのか」を検討し,現象とその構造を明らかにすることを目的とする事例検討会。
 一方で山岳に臨む登山家の方々もまた,下山後に一連の登山を振り返り,変化や問題があった場合にはその現象と原因(構造)を丹念に探ると聞きます。そこで,得られた知見が以降の登山に還元され,やがて実践知となっていくそうです。
 臨床における現象を振り返る事例検討会の営みと,一連の登山を丹念に振り返る先の登山家の営みは,微妙な差異はあれども,共通するもののようにも思えます(連想があまりに安易な気もしますが……)。事例検討会での丹念な振り返りが,臨床に還元され,「臨床知」となっていくことを願ってやみません。そのような思いを今月号の表紙に込めました。