編集こぼれ話

 「倫理」という言葉には壮大な響きがあります。古今東西,「倫理」をめぐっては多くの言説や思考が積み重ねられてきました。それらの言説や思考に触れ,より根源的な「倫理とはなにか」という問いに向きあいつづけることには大変な意味がありますが,そうした大きな問いを前にしますと,ときに「倫理」とは自身の外部に存在して行動を規定するものという印象をもたれてしまいます。
 しかし,倫理の本来あるべき姿とは,それが「正しいのか否か」(という問いの立て方もどうかと思いますが)と,個人のレベルで問い続ける「態度」にほかなりません。かなり飛躍したもの言いですが,倫理とはすべからく「態度」である,ということをご執筆いただいた方々の論稿を読んで再確認させられました。「倫理を倫理たらしめる基準」が「揺るぎなく存在する」と信じこむこともまた,反倫理的態度といえるのかもしれません。