特集にあたって

財団法人井之頭病院 渡辺純一

 「看護研究」という言葉を聞いて,読者のみなさんはどのようなイメージを想起されるだろうか。肯定・否定どちらにしろ,素通りできないなんらかの感情がつきまとうのではないだろうか。
 臨床においては「看護研究が好き」という肯定派が少数派なのはたしかであろう。何しろ看護研究は,大学の先生たちの「お仕事」で自分たちはアンケートに答える研究対象者であるという立場や,「今年はうちの病棟が当番だから」「3年目研修は看護研究」という感じに「上から降ってきて,否応なしにやらされるもの」という印象が相場であるからだ。しかし,ここであらためて考えてほしい。看護研究とははたして特別なもので,臨床にいる自分たちには遠い世界の話なのだろうか。「看護」研究という以上,本来,看護を実践しているわれわれ臨床家のものであってしかるべきではないだろうか。
 本号の特集は「臨床による臨床のための看護研究」である。各稿のなかで述べられているように,研究のタネは臨床に数多く転がっている。そのタネを見つけ,育てるには「臨床日記」という方法がある。そして,臨床看護のプロセスは研究プロセスと同様なのだ。また,過去に看護研究を実践し,なんらかの発見・成長を得た先輩の声を聞くことは,これから看護研究に立ち向かうわれわれの力になるだろう。
 さあ,準備は整った。看護研究を臨床の手に取り戻す旅に出かけよう!