編集こぼれ話

 今月号の特集では看護研究,とりわけ「臨床のための看護研究」に焦点をあてました。殊更に言うまでもなく,看護研究や看護学はその知見を臨床に還元すべき実践の学であり,それらを担うべき主役は臨床看護師のみなさまです。もちろん,研究の動力には「知的好奇心」がありますので,強迫的になにがなんでも「(臨床)現場に還元すべき」という狭義の現場主義を唱えたいわけではありません。しかし,本来的には臨床に還元されるべき看護学や看護研究と臨床実践の解離はしばし指摘され,この問題にいかに正面から立ち向かうのか,十分な議論がなされているとはいえない状況があるという批判もしばしば耳にします。
 「(看護)研究」と聞くと,過剰に壮大な営為を想像してしまいがちです。無論,それは間違いではないのでしょう。しかし,何より重要なのは,まずその研究を必要とする現場に立ち,そこに満ち溢れている「(臨床的)問い」をみずから見つけることではないでしょうか。訳知り顔に理論を振りかざすまえに,それは「なんのための研究なのか」「研究とは,学問とはなにか」と自問することが肝要なのではないでしょうか。その自問なくして,「研究」も「学問」も成り立つわけはありません。いま求められているのは,目先の「科学らしさ」に踊らされることなく,そうしたより本質的・原初的な問いの前に立ち,留まる勇気をもつことだと思います。本特集がそのための足がかりとなり,臨床看護師のみなさまが「研究的臨床実践者」(詳しくは本号掲載,松澤和正先生の論稿をご覧ください)として自立するため一助となりましたら幸いです。