特集にあたって

NPO法人多摩在宅支援センター円 寺田悦子

 私たち医療従事者は,当事者・家族の支援は必要であると常々思っている。しかし,精神科病院で働く看護師は,目の前の患者様のことで精いっぱいである。向こう側にいる家族の「つらさ」や「思い」が見えにくいのではないだろうか。
 かつて,家族は「保護義務者」として国に位置づけられ,「治療を受けさせる義務」「自傷他害防止監督義務」「医師に従う義務」など,多くの義務を課されていた。一部廃止されたものもあるとはいえ,いまもなお,家族が負う責任,負担は軽いものではない。私個人は,地域の家族会に参加して,次から次へと出てくる家族の重く,つらい話を聴くたびに,医療・福祉の無力さ,そして個人での支援の限界を実感している。
 最近になって「家族の負担を軽減するためには,医療保護入院にかかわる同意を含む“保護者制度”を見直し,公的機関が責任を負う制度に改めることが必要である」といった議論がなされている。今後,制度の改正に期待したいところである。
 今回の特集は,大規模なアンケートによる家族の声の紹介にはじまる。家族からの「わたしたち家族の7つの提言」を,私たち医療従事者は真摯に受けとめなければならないだろう。ほか,現場で働く看護師たちの日々の心がけや,地道な家族支援の振り返り,そして精神医療のあり方が変わったイギリスの例などを通じて,家族の声に耳を傾けること,そして今後の積極的な家族支援の必要性をあらためて考えたい。