編集こぼれ話

 「面会に行ったら,理由の説明もなしに門前払いされた」「退院するたびに悪くなっている気がする」「あんなに大量の薬が必要なのか?」。これは,私の友人の言葉。彼の親族に当事者がいて,入退院をくり返していましたが,昨年,若くして亡くなりました。ずっと面倒をみてきた友人のご一家は涙に暮れ,いまだに精神科医療者への不信がぬぐえていないようです。家族がどのような支援を求めているのかを,医療者のみなさんに知ってほしい。家族を大切に思っている精神科医療者がたくさんいることを,彼に知ってほしい。そんな思いを込めて,この特集を企画しました。
  アンケートからは,残念ながらご家族の多くは,現在の精神科医療のサービスは“不足”と感じていることがみてとれます。これは医療者が何もしていないということではありません。「家族支援にまではとても手が回らない」という現在の医療制度の限界が示されたといえるのではないでしょうか。将来的には,医療制度を見直すことも必要かもしれません。しかしまずは,読者のみなさんが,目の前の患者さんの向こうに,同じように心を痛めたご家族がいる,ということを意識するきっかけになれば幸いです。患者さん・ご家族の「救われたい思い」と,医療者のみなさんの「救いたい思い」が合致し,今後の精神科医療の充実につながることを,願ってやみません。