特集にあたって

岐阜医療科学大学 野中浩幸

 3月11日,午後2時46分ごろ発生したマグニチュード9.0の,とてつもない東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)は,日本だけではなく世界各国にも影響するほどの未曾有の危機をもたらしている。
 おそらく復興するには気の遠くなるような時間と,莫大な費用,そして「気力」が必要になってくる。また,長期的な被災者援助が必要であり,他人事ではなく「何ができるか」をともに考えていかなければならないし,まさに「連携」が必要なのである。
 「連携」とは,広辞苑によれば「同じ目的をもつ者が互いに連絡をとり,協力しあって物事を行なうこと」とされる。本号の特集では「多職種連携で支援の輪を広げる」と題し,その実践を精神科医療・福祉関係の多職種に述べてもらった。
 各々の主張にもあるように,「連携」は実はそう簡単なものではない。なぜなら,各々の専門性やその背骨に通っている教育・理論,体験が互いの合意形成を邪魔する場合がある。1つの問題を中心にすえてあらゆる角度や立場から意見を出し,それぞれの役割や特性を活かした多面的なアプローチに結びつけることが,多職種連携の理想なのである。
 それには各職種が相互理解できるように,橋渡しや調整をする人が必要になるが,もっとも適していると思われる職種は,看護師なのではないだろうか。
 言葉のもつ力は重要だが「連携,連携」と言わなくても,自然に協働できる社会がくればよいなと思う。