編集こぼれ話

 最近では「多職種連携」という言葉にはさしたる目新しさはありません。では,それぞれの現場ではさして問題もなく多職種が連携をはかれているのだろうか,それが本特集を企画するうえでの素朴な疑問でした。しかし,その実は……。
 みなさんも日々の臨床実践の中で感じておられることとも思いますが,「連携」をめぐりそれぞれの現場では,想像以上に多くの困難があることを実感させられます。思えば,教育背景や使用言語の異なる職種同士が1つの目標に向かうことはそう簡単ではありません。教育背景や理論のみならず,各職種が描く“専門性”の像が,ときに職種間の合意形成の妨げになる場合もあるのでしょう。
 看護の世界において議論される「(看護の)専門性」も他者からの視線を度外視していては,そこに立ち現われる像は,“こうありたい”という欲望を投影したものに過ぎなくなってしまうのではないでしょうか。本特集の各稿に共通するのは,合意形成をはかるための“対話”の重要性です。あたりまえのようにも思えますが,この“対話”にどれだけの時間と情熱を注げるのかによって,連携の質は決まってくるのでしょう。それは医療の世界に限った話しでは決してなく,現在,未曾有の事態にあるわが国全体にも言えることのように思います。