特集にあたって

公立学校共済組合関東中央病院 佐藤恵美子

 うつ病患者は全国で100万人を超えている。しかもその半数以上は女性が占めている。またその総数はうなぎのぼりであり,現代病の1つとなっている。同時にうつ病(メランコリー型)らしくないうつ病(非定型)の患者に出会う率も相当,高くなってきた。自殺などの衝動性も高く,またその背景にある人格的な問題も相まって社会問題として取り上げられることも多い。長年,精神科病棟で勤務している看護師はこの変化に戸惑いを隠せないのではないだろうか。
 今回の特集では「うつ」をもつ患者をどう理解するかに焦点を当てた。各々が「うつ」をキーワードに相手を理解することはどういうことなのかを自問自答し,相手をわかろうとする過程を綴ってもらった。
 臨床現場において,患者をわかろうとするとき,看護師は自分自身の感情と否が応でも向きあっている。看護師が自分の感情と向きあうことで,いままで見えなかった患者の思いや感情が少しずつ見えてきたという経験を少なからずしているはずである。
 そもそも精神科看護においては「相手を理解する」ということが基本になるのだが,その基本となるものをていねいに扱えているのだろうか。「相手の立場になって考える」ということがいかに難しく,一筋縄ではいかないということを実感できているだろうか。「わかったつもり」にならずに,読者の方々にも一緒に考えてもらえればと思っている。そして,それが相手に対し深い意味での理解へとつながることを願いたい。