特集にあたって

医療法人社団翠会成増厚生病院 榊 明彦

 今年,障害者基本法の一部が改正した。これからも,障がい者を支える共生社会政策は推進されていくだろう。またこの方針の実現を考えると,医療者はこれまで以上に当事者の人権を守り,主体性を支え,尊重することが求められていくのではないだろうか。
  では,看護師が当事者の主体性を支えるとはどういうことか。
  たとえば入院治療では,経験のない療養生活への不安や緊張の中,秘めた苦痛や揺らぐ気持ちを支え,本来もっている力を取り戻すための支援をすることであろう。別段言うことでもないが,当事者と真摯に向かいあい,治療への意思を確認していかなければ,患者の主体性は育めない。さらにありがちな場面を考えてみる。内服のときに「これはなんの薬ですか,薬はあまり飲んだことがないので心配です」「飲まなければいけませんか」などの言葉を,看護師はどう受けとめるのか。看護師の訊き方や返答の仕方によっては,齟齬の原因となり治療への信頼に影響する。
  今回の特集は,精神科治療の柱である薬物療法に対して当事者は主体的であるか,に焦点をあてた。特に,治療に抵抗を示している当事者には,どのような理解をもってかかわればよいのか,またどのような人の協力が必要になってくるのか。「当事者主体の服薬支援」という緊要の課題を考えてみた。