特集にあたって

医療法人社団翠会成増厚生病院 榊 明彦

 自宅で暴れている,食事を3日も食べていない,過量服薬をした,夜間の徘徊が止まらない。彼ら彼女らが地域から発するSOSを支えるのが精神科救急外来である。
  一方救急病棟では,患者同士が揉めている,保護室で興奮状態,ベッドから立とうとして転倒した,死にたいといって自傷行為をする……。ナースは24時間フル活動である。
  そのような病棟では常に揺動していて,患者の話をじっくり聞き,ケアへつなげていくなどというゆとりはない。ナースたちの方途は曇ったまま,疾風怒濤の毎日を耐え凌いでいるのである。
  それでも高邁な精神を持ち,患者の苦痛に向きあいつづけている人たちがいる。今回の特集は「精神科救急のいま」を取り上げた。
  リスク管理から患者の心理教育,そしてスタッフの育成。それぞれの知識を活かして,ケアの質にこだわる精神科看護師たち。
  どの論稿も臨場感が伝わり,社会的役割,使命,責任性が紡ぎだす「やりがい」のエネルギーと力強さを感じる。
  現在,私もスーパー救急で四苦八苦しているナースの1人。久しぶりに勇躍した私の体温は,ゆっくりと上昇した……。