編集こぼれ話

 「医療はサービス業である」との言葉は現在では広く定着しつつあり,医療現場ではそれぞれ「接遇」向上を目的とする取り組みがなされていることと思います。その背景には,これまでの医療のあり方をとらえ直そうとする自覚的な意識や,医療への市場原理の導入,また医療事故やクレームへの対応,インフォームド・コンセントを代表とする「医療者-患者」関係の深化など,さまざまな要因が存在すると考えられます。
  「接遇」を「おもてなし」と広くとらえるのであれば,たしかに医療もまたサービス業に違いはないのかもしれません。ただ,その接遇のあり様ははたして他のサービス業と同様のものであり,他の業種(の接遇マニュアル)にそのあり方を求めることが最善の道なのか。むしろ「おもてなし」が「相手の思いを汲みとり,それに応えようとする」ことであるとすれば,それはそもそも看護に通底する精神,いや,“看護そのもの”なのではないかと考えました。本特集では,日々の「看護そのものを見つめ直す」ことがひいては「接遇の向上」に結びつくのではないかと考え,『接遇とケア』というタイトルを付しました。本特集が「(精神科)医療現場の特性を踏まえた「接遇」のあり方とはどういうものなのか」,そして「“看護”と“接遇はいかに内在的に結びつく精神であるのか」を,読者のみなさんとともに考えるための手がかりになれば幸いです。