特集にあたって

日本赤十字看護大学 鷹野朋実

 近年,精神科医療においても「入院期間短縮化」が声高に叫ばれ,診療報酬をはじめとしてさまざまなプレッシャーが,医療現場に与えられている。過去に社会的入院という事態を多数生み出した事実を,我々は大いに反省しなければならないし,入院を長期化させないための努力は必要不可欠である。だが,治療への反応も含め,回復の経過はさまざまである。急性期治療ばかりに関心が向きがちだが,入院が長期化する慢性期患者もいるという事実も受けとめなければならない。
  回復のめど,社会復帰の展望がなかなか見えてこない慢性期病棟での患者とのかかわりは,スタッフの活気や士気を低下させる。次第に,病棟では,かかわりよりもさまざまな病棟規則の厳守が優先されるようになる。そして,病棟は患者とスタッフの無力感であふれ,病棟全体が沈滞したあきらめムードに支配されてしまうようになる。こうした「負のスパイラル」のようなものが,慢性期の病棟には出現しやすいように思う。
  今回の特集では,このスパイラルを打破する,予防する方策を,執筆者の方々に,おのおのの現場から,さまざまな切り口でご提案いただいた。看護師が長期入院患者とかかわりつづけることをあきらめないことで,病棟は変わるし,患者個々も変わっていく。沈滞ムードの中にある皆様にとって,本特集がそれを打破するためのヒントになってほしいと切に願う。