特集にあたって

医療法人社団翠会成増厚生病院 榊 明彦

 近ごろ,精神科病院では,治療プログラムにストレス緩和の手法を組み込むところが増えている。たとえば,足浴でリラックスをする,エクササイズで血液の循環と代謝を促す,アロマで神経を鎮静しながら心身の安定を保つ,といったものである。大局的には,健康の保持,増進に加え,集団生活でのストレス軽減がねらいなのだろう。
  さらに,こころの健康を保つことを考えるならば,活動と休息のバランス,特に睡眠について考えたいところである。言うまでもないが,睡眠は,人間の3大欲求の1つである。ことに昔の人は「快食,快眠,快便が大事」と言った。これらは,健康のバロメーターとなるからである。看護師は患者さんと別段込み入った会話をしなくとも,食事はおいしく食べられているか,夜は眠れているかなどのやりとりで,身心の状態を把握することがある。睡眠は病気の回復に,とても大切であることを私たちは知っているからである。とはいえ,大切であると知りつつも,それをどう評価したらよいものか,看護の実践にどうつなげていけばよいのかは正直なところ自信がない。
  本特集は,睡眠状態が病気の回復,病状のレベルを知ることに寄与するという視点でまとめた。患者さん個々の睡眠をアセスメントし,その側面からいま一度,目の前の患者さんを理解してみてはいかがだろうか。