特集にあたって

帝京大学医療技術学部看護学科 遠藤 太

 タッチングの効用は,学生のころから学んできた。しかし,この年になると「照れくささ」が邪魔して,なかなかそれができなくなっている自分に気づく。もとより,女性のように自然に触れることが苦手な男としては「適切な距離感が必要だ」ともっともらしくつぶやきつつ,学生と患者さんとの絵になるような触れあいに嫉妬している。
  以前,「合併症効果」という言葉が紹介された。これは精神症状が活発で治療困難な患者さんが,合併症を発症し,濃厚な身体接触を伴うケアを受けることで,精神症状が軽快し,難しかったコミュニケーションが改善するような効果のことだが,これに類する現象は筆者も数多く経験している。そこには「心身一如」(心と身体の不可分性)の不思議さや,精神看護の可能性への重要な示唆が含まれている。
  今回の特集は,“補完代替医療”の意義と効果を紹介している。これらは近代西洋医療が「取り残した」場所に焦点を当てるものであるが,読み進むうちに,それらの方法が,もう一歩患者さんに接近できる可能性をもっていることがわかってくる。私たちが補完代替医療への関心と理解を深め,それを看護のバリエーションの1つにできれば,照れず力まず,患者さんに自然に触れる自分を見出すことができるのだろうか。