特集にあたって

日本赤十字看護大学 鷹野朋実

 病棟には仕事内容や進め方,病棟規則といった決まりごとから休暇の取り方に至るまで,さまざまな暗黙の決まりが「集団規範」として存在する。それは,病棟スタッフの認知,感情,態度,行動などの基準となり,それぞれの病棟に特有の雰囲気を醸し出していく。この雰囲気は病棟の活性化にも役立つが,硬直化させてしまう危険性も孕んでいる。
  病棟は患者の治療の場であるのだから,当然,病棟の雰囲気は治療的環境に貢献するものでなければならない。1960年代には精神科の「病棟雰囲気尺度」が開発され,雰囲気に影響をおよぼす組織のモラール(士気,勤労意欲などと訳される)の問題点を明らかにするモラール・サーベイの重要性が指摘されてからも久しい。しかし,未だに患者の人権にも抵触しかねない病棟文化が存在し,虐待のような痛ましい事態を引き起こすことさえある。治療的環境を作り出すのは看護師の職務であり,病棟の雰囲気には常に敏感でなければならない。今号では,治療的環境づくりに役立つ3つの具体的実践をご寄稿いただいた。読者にとって,自院の病棟文化を見つめ直す契機になれば,と切望する。