特集にあたって

帝京大学医療技術学部看護学科 遠藤 太

 学生たちと話していて気になるのが「ぼかし言葉」。「私って人見知りじゃないですかぁ。」「患者さんとか,超緊張するんですけど」「っていうかぁ,私的には,がんばって話してるんですけど。患者さん的には,なんか『は?』みたいな」。このような「現象」を,大阪大学大学院人間科学研究科の辻大介先生は「互いを束縛する重い関係より相手に寄りかからない軽い関係を選好する対人心理」と分析している。話せば自ずと言葉に対する責任が生まれる。その責任で自分の行動が束縛されるのを嫌うため,言葉をぼかすことで責任を回避する無意識の防衛だと考えられる。
  さて,認知行動療法である。多くの書籍や研修会があり,魅力的なテクニック,記録シートなどが紹介されている。しかし,その基本は「患者と看護師の協働関係の構築」「ていねいなアセスメントの過程」であり,いわば重い関係性である。それゆえに,「CBT的なコラム法とかやってみる,みたいな……」という軽いノリで,援助者の関心が中心となるような取り組みが行われているとしたら,それは看護の「責任の回避」というほかない。本特集は,認知行動療法による看護への新たな可能性の提示と,ともすると技法に流れがちなわれわれの安易さへの警鐘とも読める。本質を外さずにCBTの学びを深めていきたい。