特集にあたって

帝京大学医療技術学部 遠藤 太

 精神保健福祉資料によると,精神科在院患者数は,2007(平成19)年の31.6万人から,2010(平成22)年には30.9万人と,2.4%(7,494名)減少している。しかし,65歳以上の在院患者の数は2010年に15.2万人と6%増加し,2人に1人となった。また高齢患者のうち認知症は6万人で,3年間で10%増加し,10年後には8.6万人が在院するとの推計もある。
 一方で隔離患者は,2007年の8.2千人から3年で9.1千人と11%増加している。また身体拘束に至っては,6.8千人から8.9千人と実に32%も増加している。しかも,これにはミトンや車椅子による行動制限は含まれておらず,ここで現れた数字は氷山の一角ではないかという指摘があることも忘れてはならないだろう。
 これらの数字は,今回の特集の中でもしばしば語られているとおり,精神科病院において高齢・認知症患者の身体拘束をなくすことがいかに難しいかという厳然とした現実を突きつけてくる。それは同時に,行動制限最小化に関して私たちがまだできることが多く残っていることも訴えかけてくる。
 誰1人,したくてしているわけではない身体拘束。課題と向きあいながらも,われわれ看護師の意識改革がいま,必要となってくる。

★ 平成22年度精神保健福祉資料より