特集にあたって 医療法人社団翠会成増厚生病院 榊 明彦
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25年くらい前の精神科病棟。雨続きの蒸し暑い日の午後だった。背中から怒声が飛んできた。「コノヤロー」「ナニオー」デイルームでにらみあう2人。2人とも筋肉隆々の大男。に加えて一方は剣道,また一方は柔道の経験者。宮本武蔵か姿三四郎か。両者の双眸からは火花が散っている。これはえらいことになった。「ストップ!」。私は声を張り上げる。2人の元へと走り火花の間を割って入った。とその数瞬,「ゴン」と「ガン」の衝撃。私の目からも別の意味で火花が散った。武蔵からは顎を,三四郎からは後頭部を殴られたのだ。これが最初で最後の(最後であってほしい)患者さんから受けた鉄拳である。 |