特集にあたって

編集部

 2011年3月11日に発生した東日本大震災。沿岸部に甚大なる被害をもたらした津波,またその後に発生した福島第一原子力発電所事故など,震災後にしばしば用いられた言葉が示すように,このたびの震災はまさに「想定外」のものであったといえます。
  復興に向けた確かな歩みが進められるもののいまだその途上にある現況において,震災発生当時を振り返り,今後の「災害への備え」についてご提言いただくことは,もしかすると時期尚早であるのかもしれません。しかし地震大国と呼ばれ,今後も同様の震災が起こることが懸念されるわが国にあっては,そのご経験から学ぶべきことが多いことも事実であるように思われます。
  そこで今号では,東北で実際に震災をご経験された方々,また被災地から避難する患者さんを受け入れた病院に,震災発生直後とその後の経過を振り返っていただきながら,そのとき何が必要だったのか,今後どのような「備え」が必要となるのかについて述べていただきました。また「備え」とは物品に限るものではなく,想像を絶するような災害を経験することで生じるメンタル面での変化に対する心構えもそこに含まれるとの考えから,震災からこれまでの思いの移り変わり,そして復興に向けた新たな試みについても語っていただいています。今回の特集が,ご自身が勤務される病院・施設,あるいはそこで働く個人の「災害への備え」を見直すきっかけになれば幸いです。