特集にあたって

新新会多摩あおば病院 坂田三允

 医療および看護は,関係法規にもとづいて行われているのだが,日常の業務のなかでは,目の前で生じていることに注意が集中し,法律の意味するところを深く理解しないままに,日々が流れていくことも多いように思われる。精神科では医療や看護の必要上,一般的には考えられないような,患者に対する行動制限や身体的拘束が行われることがあり,それがたとえ善意から出た行為であったとしても,結果的に患者の人権を侵害していることが珍しくないがゆえに,ほかの領域とは比較にならないほど多くの法律が関係する。法律があることを単に「知っていて」その条文を遵守したケアを展開するのと,日々の看護のなかで法への「理解を深めて」,その条文を遵守する意味を考えながらケアを展開するのでは,その質に大きな差が出るのではないだろうか。
 そこで,今回の特集では,知ってはいるけれど実はあまり深く理解できていないかもしれない法律の意味するところを,あらためて「いま行っている看護に直結する」問題として取り上げることにした。「精神保健福祉法」の「行動制限」にまつわる内容が多くなってしまったが,もちろんわれわれがかかわる法律はこれだけではない。これを出発点として,われわれの日常のケアは法的にみるとどういうことになるのかを見直す手がかりにしていただければ幸いである。