特集にあたって

編集部

 本特集ではまず座談会において,地域ケアに従事する看護師や精神保健福祉士が協働に際して病棟看護師に望む事柄を議論していただいた。また,当事者による病棟看護師と地域ケアに従事する看護師とのかかわりあい方の違いも語られた。座談会では「白衣を脱いで」1人の人-生活者としてご本人にかかわる大切さが指摘されているが,入院という「非日常」の生活のなかで,「日常」を見失わないための重要な視点だろう。しかし座談会でも指摘されているように,地域ケア,病棟におけるケアを白黒分ける必要はない(それは病院―地域の軋轢を生むだけだ)。あくまで医療職としての看護師の強みを活かしつつ,1人の人としてご本人とかかわるためのバランス感覚が重要なのであろう。
  特集は座談会のほか『地域ケアに従事することで開かれた視点』と題して4名の,地域ケアに従事している看護師に,それぞれの「地域体験」を紹介してもらった。地域に出るきっかけこそ異なるが,そこに共通して見えてくるのは看護師である以前に「私」としてご本人とともに時を過ごし,ともに喜び,悩む,関係性の豊かさだ。
  地域ケアの重要性が叫ばれる昨今だが,病棟で働く看護師にとっては自分の仕事場をおいそれとは変えられるものではないだろう。そうした事情を踏まえてもなお,本特集が地域ケアの魅力を伝えることができているならば幸いである。