特集にあたって

編集部

 今回の特集では,主に臨床における管理者―スタッフの関係性の構築のありようについて検討した。すべての報告を通じて共通するのは相手の言葉を真摯に「聞くこと」と,自分の考えを率直に「伝えること」。また,その相互性の中での関係性の構築や強化が図られるということ。いみじくも特集座談会の中で発言されているように,これは看護者が患者さんと向きあう際の基本スタンスとも近似している。精神科看護者だからこそ,この点においても専門性が発揮され得るのではないだろうか。
 また特集では作業療法士・精神保健福祉士から,看護者との協働の際に生じる特徴的なコミュニケーションについても,それぞれの立場で紹介してもらった。日々の看護を客観的に眺めてもらう材料としていただければ嬉しい。
 余談めいた話となってしまうが,今回の特集タイトル決定には難儀した。「臨床におけるコミュニケーション」で大味だし,「関係性構築のための方法」では形式的すぎる。現実において,臨床の中でのスタッフ間の関係性のありようは,流動的かつ固定的というような,矛盾を孕んだ性質のものだろう。一見コントロール不能のようにも思えるそうした性質に対して,「諦めずに果敢に関係していく」姿勢こそが,栄えある構築をもたらすのだろう(これも座談会での発言だが,こうした姿勢は「みずからを開いていく」という姿勢とも呼応する)と思い至り,標記のタイトルに落ち着いた。