特集にあたって

編集部

 昨年に成立した精神保健福祉法の一部改正により,新たに策定することとされた「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」において,重度かつ慢性の患者以外の入院期間が1年を超える長期在院者に対して「原則として行動の制限は行わないこととし,外部の支援者との関係を作りやすい環境とすること」という方向性が示された。
 こうした方向性が今後どれだけ現実的な仕組みとして結実していくかは未知数だが,もしこの点が明確となれば,臨床には少なからずインパクトを与えることになるだろう。
 一方,臨床に目を向けると,精神療養病棟など看護要員が少ない領域での行動制限が増えているという現状や,行動制限の弾力的な運用が絶えず議論の俎上にあがっている実態,さらには高齢認知症患者への行動制限が新たな問題となっているなど,指針が示す方向性の臨床における実現までの道は決して平坦ではない。
 とはいえ,行動制限最小化への努力は常に求められるものだろうし,その姿勢が精神科看護の質の向上に与えるものは少なくない。
 そこで今回は精神医療が新たな時代に入りつつある昨今において,変化にさらされる臨床であるからこそ「基本にたち返る」姿勢が重要だとの認識から,表記タイトルのもと,行動制限最小化看護の今日的課題,押さえておくべき基礎知識などをまとめた。