特集にあたって

東京医科歯科大学医学部附属病院 松岡裕美

 私が勤務する精神科デイケアで,利用者のリカバリー促進要因を調査したことがあった。抽出されたのは,①内省と気づき,②豊かな内的体験,③内発的動機づけの3因子で,①の中核は自己理解,②は心地よいものから不快なものまで,まさにいま抱いている感情や感覚を自分で受け取ること,③はもっとも重要な要素で「人とのかかわりのなかで,自己決定にもとづく行動がいい感じに作用し,ちょっとした自信につながる」という過程がくり返されるというものである。デイケアスタッフは,利用者がさまざまな経験を重ねる道のりに「いる」ことが重要なのだが,この「いかた」加減が難しい。中途半端な道案内は利用者の責任を奪い取り,自分でやっていこうという気持ちを萎えさせてしまう。しかし一方で,陰ながら見守るのでは不十分であり,道が行き詰まれば一緒に振り返り,歩みを進められるよう,情報を確かめあいつつ同伴することも必要となるのだ。
 今回ご紹介するWRAPでは,先に述べた3つの因子が,セッションとWRAPの日常生活活用によって強化されて得られる仕組みになっているようだ。さらに,リカバリー支援者への「いかた」のヒントも満載である。WRAPの世界に触れた後で,あらためてみなさんが活躍されている臨床での“主役”を確かめてみるとよいかもしれない。そして,患者の病気回復だけではない人生そのものに目を向け,看護計画にひと工夫加えてみてはどうだろうか。