特集にあたって

公益財団法人井之頭病院 畠山卓也

 看護記録。私たちは毎日あたりまえのように記録している。あまりにもあたりまえ過ぎて,機会がなければ,私たちは自分の書いた記録を振り返ることはない。今号では,私たちが毎日携わっている看護記録に焦点をあててみようと思う。きっと,読者のみなさんにとっては,普段振り返る機会の少ない「私の書いた看護記録」について,一旦立ち止まり,点検する機会になるだろう。
 本特集は,①看護記録を書く前に思考を整理すること,②実際に書いた看護記録を振り返るためのヒント,③看護記録の電子化によってもたらされるもの,といった内容で構成した。
 どんな記録方式であっても,そこで記録されることは,私たちが看護という現象を通して「見たり,聞いたり,触れたりしたこと」である。言い換えると,目の前に広がっている現象のなかからキャプチャーしたことを,私たちは日々記録しているのである。この観点に立つと,現象をキャプチャーする私たちの思考様式が,看護記録に影響を及ぼすのである。フレームワークは,思考を整理する1つの手立てであり,専門家としての力量を培うために一役買うだろう。看護記録を振り返るためのヒントは,いますぐにでも取り組める実用的なものである。ぜひ,自己学習やOJTの場で活用していただきたい。また,診療録の電子化に先進的な役割を果たしてきた病院からの示唆は,これからの診療録の活用可能性を検討していくヒントになるだろう。