特集にあたって

編集部

 日本において知的障害をもつ人は54.7万人(在宅者:厚生労働省「知的障害児(者)基礎調査」/施設入所者:厚生労働省「社会福祉施設等調査」:ともに平成17年)と推計されている。また,精神保健福祉資料(630調査)によれば,精神科病院における知的障害(精神遅滞)の患者数は2012年の時点で6,184人とされている。精神科医療の領域で働く方々にとって,この数字が実感と合うかは別にして,知的障害をもつ方(あるいは精神疾患との重複のケース)へのケアにおいては,さまざまな「問題」,具体的に言えば行動障害に頭を悩ます。しかし,ただ現象を「問題」として見ているだけでは,かかわりは進展しないだろう。こうした視点は,不適切な対応による二次三次的な障害をももたらす可能性もある。
 そこで今回の特集では,知的障害をもつ人へのかかわりにおいて基本となるポイントや工夫,今後克服すべき課題について,病院・施設における実践をもとに紹介している。本特集のなかで重要視されているのは,問題行動そのものを1つのコミュニケーションとしてとらえ,援助者がそれを適切に汲みとり,ニーズを掴み,援助につなげていくこと,そして知的障害をもつ人を援助するかかわりのなかで出会う「困りごと」を少し違った角度から見るという視点だ。今後も「困難ケース」としてたびたび出会うであろう知的障がい者へのケアをよりよいものにするための1つの学びとなれば幸いである。