特集にあたって

医療法人社団恵友会三恵病院 瀬野佳代

 精神科看護では,看護師と患者の対人関係やコミュニケーションに大きな治療的意味がある。自己肯定感・自己効力感の低い患者にとって,看護師の肯定的ストロークは,患者の「ストレングス」を見出し,その部分を伸ばしていくことにもつながっていくだろう。
 しかし,その一方で,看護師は問題解決型思考のもと,とかく患者の問題・課題にばかり焦点をあててしまい,気がつくと注意や指導ばかりという状況に陥ってしまうことも少なくない。そこで,本特集では,肯定的ストロークのうち,「ほめる」ことの「意味」と「技術」について,あらためて考えてみたいと思う。
 「ほめることにはすごい効果がある!」。これは,地域の高齢者を対象とした健康教室のなかで私自身が実感していることである。月2回,認知症予防の『ふまねっと運動』教室を開催していのるだが,そこでは決められたステップを正しく踏むための指導ではなく,ステップを踏むたびに「いいですよ~」とほめることをもっとも大切にしている。参加している高齢者は口ぐちに「この年になって,ほめられることなんてないからうれしい」と話し,みなさん楽しそうで,溌剌としている。
 本特集を通して,「ほめる」ことをコミュニケーションスキルの1つとしてあらためてとらえ直し,使えるように心がけ,精神科看護師としてのスキルを高めてもらいたい。