特集にあたって

木下孝一(特定医療法人共生会みどりの風南知多病院)

 厚生労働省は2004(平成16)年9月に「精神保健福祉施策の改革ビジョン」を公表し,10年後の2015(平成27)年を目標に,約7万人の精神障がい者の退院に向けた施策が進められてきた。しかし,それぞれの現場で試行錯誤を重ねながら退院に向けた支援がなされる一方で,思うような結果が得られないという困難な現状も依然として存在する。
 地域移行・定着支援を推進していくためには,多職種連携が重要になってくることは言うまでもないが,その連携がうまくいかず,支援が進まないという声もしばしば聞かれる。昨年,障がい者相談支援センターの方から,「地域移行支援を進めるには看護師さんの協力が重要なんです。看護師さんにコーディネーターを担っていただくことで,多職種の連携がスムーズにいくと思っています。そこで,どうすれば協力を得られるのでしょうか」との相談を受けた。このとき初めて,地域移行・定着における看護師の役割に「調整」や「連携」役が期待されていることを意識させられた。
 今回の特集では,地域移行・定着支援において看護師が,1つの「要」となる役割を担っている取り組みや実践をご報告いただいた。精神科看護師として培った知識やスキルを病院と地域をつなぐ力に変え,支援の輪を広げた体験などをご報告いただいている。地域移行・定着支援において看護師が発揮しうる強みとは何かについて考える機会になればと思う。