特集にあたって

編集部

 今月号の特集では『かながわ精神科訪問看護&アウトリーチ研究会』,通称「かな研」の活動を通して,「専門職」「当事者」という立場を越えた精神保健医療福祉の向上に向けた協働のあり方を考えていきたいと思います。冒頭は「かな研」顧問の相澤和美さん(国際医療福祉大学)に,この研究会がもつ特徴――参加者たちの立場を越えた自由闊達な対話の重なりによって,人と人とのつながりが広がり,既存の概念を越えた運動へと発展する運動体という特徴が示されています。「リカバリーをめざす旅路」というフレーズが印象的です。次に代表の松井洋子さん(訪問看護ステーションみのり横浜)から,ご自身の「かな研」体験と絡めながらの,これまでの歩みについて概観していただきました。そして「かな研」メンバーに,多種多様な立場からキーワードを介してこの研究会を紹介していただきました。立場が異なる人たちが自由に集い,自由に対話を重ねるということは,ともすれば集団としての方向性が散逸しがちなところですが,この研究会には「リカバリー志向の理念」が通底しているために,多様性と共通性がバランスよく同居しているようです。
 昨今は医療者(看護者)に対して,病院のなかだけではない,もっと広い現場における精神保健医療福祉へのコミットメントが求められる時代です。ここで紹介する「かな研」の活動を,読者のみなさんの活動領域を押し広げていくためのヒントとしていただければ幸いです。