特集にあたって

編集部

 これまで行動制限に関する特集を複数回にわたって組んできました。それらは主に「いかに行動制限を減らすか・適正化をめざすか」という点に重点を置き,実践報告を中心に行動制限の倫理性や関連法規の情報提供などを行うものでした。今回の特集では少し視点を変え,〈すでに行動制限下にある状態―保護室入室という処遇がなされている状況での看護(のあり方)〉に焦点をあてて,保護室の看護が内包する看護の基本的態度について探っていきたいと考えます。
 保護室の看護はさまざまな意味での「契機」と言えるかもしれません。それはちょうど「誰もが一度は悩んできた保護室での看護ケア」でも描かれているように,看護師にとっては「成長の『契機』」であったり,患者―看護師関係においては,今回事例として複数紹介いただいたような「関係の再構築・関係の再スタートのための『契機』」となるでしょう。当然,患者にとっては保護室に入室するという事態は可能な限り避けたい処遇です。本人にかかる肉体的・心理的ストレスは想像を絶するものがあります。しかし,そのような「つらい時間」だからこそ,看護師にはその時間を無為なものとしない気構えと実践が求められるのではないでしょうか。
 今回の特集を通じて,保護室における看護の意義や魅力を読者にお伝えし,患者にとって困難な状況を看護師が最大限有意義なものとするためのヒントとしていただけると幸いです。