特集にあたって

編集部

 「入院医療中心から地域生活中心へ」という理念のもとに退院促進が進められるなか,依然として長期入院の患者さんを抱える病院は多い。また高齢化が進む社会のなかで,精神科病院における終末期ケアは,これまでにも増して大きな課題となっている。精神科病院における終末期ケアをめぐり精神科看護師は,身体治療の限界,告知や治療に関する意思決定など,治療方針をめぐる問題,倫理的な葛藤に直面することになる。
 今回の特集では,2008年11月号(通巻194号)に引き続き,精神疾患をもつ人の終末期ケアに焦点をあてたい。まず,がんを合併した統合失調患者の実態調査を通して,精神科病院における終末期ケアの現状と課題をあらためて整理していきたい。続いて,看護チームで意思統一をはかりながら,いかに患者さん・家族の希望に寄り添った終末期ケアを展開していけるのか,そのための具体的な看護実践をご紹介いただく。さらに,現在増加する認知症末期の患者さんへの終末期医療のポイントを,終末期に近づくことで起きてくる変化にそってご解説いただいた。最後に,デスカンファレンスを通して,看護師の意識はどのように変化していったのか,現場の声をお届けしたい。
 人生の最期という貴重なひと時を,いかに患者さんの心に寄り添いながら,ともに過していくことができるのか。特集を通して読者のみなさんと一緒に考えることができれば幸いである。