特集にあたって

編集部

 近年,入院する精神障がい者の社会復帰に対する,制度面での整備は進んでいます。では,現場レベルにおいてはどうでしょうか。臨床現場ではいまも昔も,単に言葉で語られる「地域移行支援」「地域定着支援」ではとらえきれない困難さに満ちています。今回の特集は,病棟看護と訪問看護の連携のあり方について,地域ケアに軸足を置く看護師の,訪問看護の実践を通じて,そうした困難さを乗り越えていく方向性について「連携」を軸に検討していくものです。
 患者その人にとっては,入院とその後の地域生活は自明のごとく「シームレス」なものです。ただ支援者(ここでは看護師としましょう)は,入院とその後では,その顔ぶれが異なります。そこで生じる落差は,患者その人の生活や支援者によって提供される支援の質にも影響するでしょう。いうまでもなく,ここでは支援者の密な情報共有と連携が必須となりますが,こと看護ということに注目すれば,「病棟/地域」という意味での看―看護連携が大きな意味をもってきます。
 今回の特集は,「訪問看護」の側から見た看―看護連携に絞りました。患者その人の住まいの場において,その人の希望に沿った,その人らしい生活を支える訪問看護師。彼ら彼女らだからこそ見えている,「入院中からの,地域生活を見据えた看護のあり方」や「病棟/地域」の落差を乗り越えていくための連携のあり方について共有できればと思います。