特集にあたって

編集部

 精神病床に入院する認知症者の多くは,BPSDが著明となり,在宅あるいは施設での支援が困難となったケースである。昨今,認知症者に対するケア技術が紹介されており,現場では一定の効果を上げているようだ。こうしたケア技術の向上は,喫緊の社会的課題である認知症治療に対する精神科看護の1つの「答え」ともいえるだろう。ただ,精神科病院には対象者を退院へと導く役割が控えている。この局面が停滞してしまえば,「精神科病院で看る認知症」の,「正当性」への風当たりは当然強くなる。
 そこで本特集は「次のステップ」を見すえた認知症退院支援のあり方について検討する。ここで中心的なテーマとなるのは,病院内外における職種間連携である。巻頭記事などにも言及されているように,そこには,「顔の見える」職種間連携が不可欠である。しかし単に「顔の見え」ていても,そこにスムーズかつ適切なコミュニケートがなければ,連携は体をなさない。その意味において巻頭記事で紹介している,情報伝達を合理化した「退院サマリー」の活用は,より現実的だといえるだろう。そのほか,今回は「薬物療法」という観点から認知症者の全体像をとらえたケアアプローチのあり方や,認知症ケアにおいて欠かせない家族への配慮などに関する実践事例も紹介している。時間・空間的な意味合いにおいて「認知症ケアを停滞させない」ためのヒントを読み取っていただければ幸いである。