特集にあたって

編集部

 精神疾患の早期発見・早期介入の必要性が説かれるようになって久しく,思春期の患者さんが精神科医療につながるケースも増えてきています。しかしその一方で,児童・思春期に専門的に取り組む精神科病院は未だ少なく,患者さんの多くが一般の精神科病棟に混在して入院せざるをえない現状があります。
 また,成長段階にある思春期の患者さんへのケアにおいては,療育や学習といった視点や関係機関(学校など)との連携など,単純に治療・看護にのみ還元できない難しさがあります。入院治療においても,患者さん自身の気持ちの揺れや行動化の激しさから,かかわりの難しさや限界を感じている方も少なくないようです。今回の特集では,あらためて精神科病院で思春期の患者さんとどう向きあうのか,その基本的な視点と実践について取り上げました。
 冒頭の総論では,思春期の患者さんをどう理解するのか,かかわりにおいて大切にしなければならないことは何か,その基本的な視点についてご解説いただきます。続いて,児童・思春期に専門的に取り組む2つの精神科病院における思春期精神看護の実践をご報告いただきます。最後に,一般の精神科病棟に入院してきた思春期の患者さんに対し,時に翻弄され,手探りながらも病棟全体で看護を展開していった事例をご紹介いただきました。本特集が,困難や限界を感じながらも,思春期の患者さんと真摯に向きあうみなさんの一助となれば幸いです。