特集にあたって

編集部

 今月号の特集は観察。観察するという行為は,精神科看護の展開あるいは看護することそれ自体において基礎・基本となる技術である。ただ往々にして「基礎・基本の技術」ほど,実践が難しいもの。観察は文字どおり「観て」「察する」行為である。ただ字義上のイメージとは異なり,その行為は(精神科看護という文脈においては)とても複雑な構成をもっている。巻頭記事はまずはその点について言及している。ここで語られるのは精神科看護の基礎ともいえる,患者―看護師の相互作用による援助関係の発展における,観察のもつ意味である。また,ここで語られる観察者自身の「偏り」への考察は,日々の看護そのものを見直すための示唆に富んでいる。
 観察は看護を行う環境によってどうニュアンスが変わるのか,訪問看護における観察について考察した記事では,利用者の生活を成り立たせる基盤そのものを対象とした観察の重要性が語られている。また,隔離・身体拘束における観察に関して言及した記事では,隔離・身体拘束下での有効な観察について述べ,行動の拡大と連動した観察について述べている。また,観察の前提となる「観察対象への関心」を導く「看護者の揺れ」への言及は,忙しい臨床のなかで立ち止まり「観察が疎かになっていないか」という内省の大切さを示唆している。
 今回の特集は,基礎・基本に立ち戻って「精神科看護における観察」をテーマにしたいと思う。