特集にあたって

編集部

 近年になって医療者主導で治療方針を決めるのではなく,患者(やそれに近しい家族や身内など)とともに必要な情報を共有し,また,患者の思いや希望に寄り添いながら方針を決めていくという「共同意思決定(Shared Decision Making:以下,SDM)」の重要性が叫ばれています。
 こうした背景には,医療の目標が「病気が完治すること」ではなく,「それぞれの患者にあったリカバリー」をめざすという方向に変化していることがあります。患者個々に生き方が違うからこそ,治療に対し受け身でいるだけではなく,リカバリーについてみずから考え医療者に伝えていくことが必要になります。そして,医療者はそれらを踏まえ治療方針を決定していくこと―つまり“共同作業”が求められます。
 本特集の冒頭では,SDMの具体的な実践プログラムと取り上げ,事例を検討しながら概観していきます。そのなかで,「医師から見た看護師の役割の重要性」についても触れてもらっています。そして看護師のSDM実践では,看護師が担うべき役割をより明確にしていきます。そして最後に「当事者が求めるかかわり」を語ってもらい,患者自身が抱える思いについて焦点をあてています。
 誰よりも患者と身近に接している看護師だからこそ,SDMで果たす役割は大きいはずです。本特集がSDM,そして患者のリカバリーについてあらためて考えるきっかけになることを願っています。