特集にあたって

編集部

 私たちは日々誰かに何かを伝えながら生きています。病院内においても,上司への報告,スタッフへの指示,同僚に意見を述べるなど,何かを伝えることなしには業務は成立しないでしょう。
 しかし,考えや意見を相手に正しく伝えるということは,考えている以上に難しいものです。「伝える」という行為はいうまでもなく,相手に「伝えた内容を理解」してもらわなければなりません。特に,身体変化とは異なり精神症状の変化は目に見えずとらえにくく,それゆえに生じる小さなミスが大きな事故につながりかねません。
 そのため,「何をどう伝えるか」が非常に重要になります。話術がうまくなるだけではなく,「伝える」内容を把握するための観察力・判断力の向上も必須なのです。つまり,「伝える」技術を向上させるということは,看護師として成長していくことにほかならないのです。
 本特集の巻頭記事では,「そもそも伝えるとは何か」に言及しながら,「哲学やコンセプト」をもつことの重要性を述べています。次の座談会では,「伝える」うえで行っている工夫や観察力の重要性,「伝える力」をいかに育むかについて議論を深めていきます。続く記事では,「組織」という視点から,望ましい報告のあり方を探っていきます。
 「相手に何かを伝える」とは,看護の基本中の基本かもしれません。しかし,だからこそもう一度立ち返ってみることも必要なのではないでしょうか。