特集にあたって

編集部

 当事者が本来的にもつリカバリーの能力を知り,それを信じるためには,まず支援者自身が身をもって「それが起こり得る」ことを体験することが有効ではないでしょうか。この意味において「自分自身のトリセツ」であるWRAP(Wellness Recovery Action Plan)は最適なツールですが,WRAPは対象に適用する「療法」ではありません。WRAPを使っている支援者が対象を支援しているということ。ここに精神科看護におけるWRAPの意味があります。
 本特集では,2014年8月号(通巻263号)に引き続き,WRAPに焦点をあてていきます。WRAPは,「元気回復行動プラン」と訳され,自分が元気でいるための「自分自身をデザインするプラン」のことをいいます。
 まず巻頭の記事では,2014年から現在までを振り返り,WRAPを取り巻く状況の変化,そしていま求められているものについて言及していきます。続く記事においては,WRAPを精神科看護に取り入れ使い続けることで,「もたらされた変化」についてご紹介します。また,座談会では,WRAPユーザーにお集まりいただき,WRAPのもつ力について語りあっていただきました。
 WRAPは「治療プログラム」ではありません。自分自身でつくる,自分のための「アクションプラン」です。現在の精神科看護のなかでWRAPがどのような意義をもつか,考える機会となれば幸いです。