特集にあたって

編集部

 医療の現場において,「暴力」という問題は決して軽視できる問題ではありません。特に,精神科医療においては,他科に比べ「医療者に対する患者の暴力」が多く発生しているという報告もあります。もちろん,暴力は起きないにこしたことはないわけですが,その暴力という観点からは,患者―看護師関係のありようもまた見出されるものではないでしょうか。こうしたことから医療の場で起こる暴力や攻撃性に対して適切に介入するためのプログラムであるCVPPPについて考えることは,とりもなおさず精神科看護について考えることであるといえるのではないでしょうか。CVPPPの示す「攻撃的な患者に対してケアとしていかに患者に寄り添い,その怒りがおさまるように治療的にかかわるかという視点から,安全で治療的な環境を守る」という理念は,「精神疾患をもつ対象者との治療関係はいかに構築されるのか」という,精神科看護における基本的かつ重要な示唆が多く含まれていると考えられます。
 臨床において生じる患者からの暴力は,治療関係の無効化や破たんを招きます。精神科看護の展開において,こうした「危機」を予防・阻止し,治療関係の構築に向けたアプローチに転換するという発想は重要です。今回特集で取り上げるCVPPPは「治療関係の構築」に焦点をあてていますが,それは看護師―患者の信頼関係の構築にも直結する問題だといえるのではないでしょうか。