特集にあたって

編集部

 世界保健機関(WHO)の定義によれば,超高齢社会とは,総人口に対して65歳以上の人口の占める割合が,21%を超えた社会である。日本社会は2007年に超高齢社会へと突入した。この影響は,精神科病院も例外ではない。2011年には,精神病床入院患者32.3万人のうち65歳以上が半数を占めるようになっている(厚生労働省患者調査)。
 「入院医療中心から地域生活中心へ」の理念のもと,精神障がい者が自立し,社会参加できるようさまざまな施策が講じられており,また,市町村による支援が行われつつある。しかし,制度が十分に整っておらず,退院後,当事者家族にかかる負担は減少していない。これまで家族は「支援者の1人」として考えられ,「支援の対象者」とは見なされてこなかった。しかし,高齢化した家族で当事者を支えていくのは困難を伴うため,当事者だけではなく,家族に対しても支援がますます必要になるだろう。
 冒頭の記事では,当事者,そして家族が高齢化することで生じている事態を概観し,超高齢社会において必要な家族支援について述べていく。続く記事では,高齢の家族とのかかわり,家族学習会の取り組みを紹介する。最後に,欧米で効果が実証され,日本でもその効果が期待されるメリデン版訪問家族支援について見ていく。
 本特集が,家族支援,そして超高齢社会における精神科医療を考える機会になれば幸いである。