特集にあたって

編集部

 今回の特集では,からだに働きかけ,そのことによって「からだから働きかけられる」というような対象と看護の相互性-コミュニケーションの発展について考えていきたい。記録やその他の業務で多忙な看護業務の中では,対象との距離間(物理的/心理的距離)が知らず知らずのうちに広がり,対象との関係性構築やそこからのケアの発展という点において支障が生まれてしまうかもしれない。もちろん,精神科看護においては対象との適切な物理的・心理的距離の見定めの重要性がいわれるが,そもそも対象との「間」が著しく空いてしまうようであれば,関係性の発展とケアの展開は危ぶまれるだろう。こうした諸課題に対して,対象の「からだに働きかける」という指向は,関係性を結び発展させるための大切な初手となるものだろう。
 「相互性-コミュニケーション」という観点としては巻頭の山口創先生の〈マッサージをする人とされる人のオキシトシンの産生量〉に関するエピソードは,精神科看護という営為と照らしあわせてみると,非常に示唆的である。また,作業療法士や理学療法士による各専門的な観点からの報告は,「からだ」への働きかけを介したコミュニケーションについて多くを教えてくれる。患者さんにいちばん身近な存在であり,日常的なケアを行うことができる看護師だからこそ,「からだ」への着目の効用をもう一度考え,日々の業務に役立てていただければ幸いです。